私がはじめて乗ったバイクは
じいちゃんの後ろ
HONDA スーパーカブ
「乗せて」とせがんでは
おんぶひもを結び
海沿いの国道を走った思い出があります。
バイクで走ると
いつもの空と海が、何倍もに広くなって
後ろに流れていく
そんな世界に連れていってくれるじいちゃんを
幼心にカッコいいと憧れました。
それから時が過ぎ
小学生の頃、戦争の本に出会い衝撃を受けた私。
ある日、祖父に「戦争のことを教えて」と尋ねると
古いアルバムを開いて
写っている兵隊さんの名前と出身地を
一人ずつ説明してくれました。
それから何度か
祖父にアルバムを見せてもらいましたが
そのたびに、兵隊さんの名前と
思い出を話してくれました。
そして、最後に必ず
「戦争は、二度と起こしてはならない。」と一言。
真剣な、低い声を覚えています。
先日、故郷に帰省した時に
数十年ぶりに
祖父のアルバムを見る機会がありました。
そこには、見覚えのある写真と
見たことのない写真がたくさんありました。
破壊された町の写真
墜落した飛行機の写真など
戦時中の厳しい場面もあったのです。
祖父は、子供だった私に
見せる写真を選んでくれていたと、気づきました。
今思えば
辛かったことは
話したくなかったのかもしれません。
海軍航空隊だった祖父は
写真班で、たくさんの記録写真を撮影
戦争が終わってからは
カメラを片手に
家族の写真をたくさん撮ってくれました。
今回、祖父の遺品や
軍人時代の手記も見せてもらいました。
終戦まで21年間の軌跡を知ることが出来ました。
祖母と出会った横須賀。
その運命がなければ、私はここに存在していません。
せっかく近くに住んでいるので
手記を元に、祖父が見た風景を辿ってみたいと思っています。
今年初めに、友人に”先祖の戸籍を取れる”と聞いて
いろいろ調べ始めてから、
知りたかったことが続々と明らかになり、胸が震えます。
貴重な資料を見せてくれた本家の皆様に、感謝を申し上げます。
幼い頃、山や海に出かける祖父の後ろを
いつもくっついて走っていた私。
「よく来たな」と笑う声が聞こえます。